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(`・ω・´) 2012-02-24 未分類 トラックバック:0コメント:0

【遊郭恋物語~高尾太夫~】第弐話【裏返し】



登場人物(♂3:♀3) 所要時間約25分

●高尾太夫(たかおたゆう)♀
●久蔵(きゅうぞう)♂
●弥介(やすけ)♂
●富(藤紫)♀
●吉平(きっぺい)♂
●おりん♀




第弐話【裏返し】

藤紫   2回目のお越し真にありがとうございんす
     わっちら遊女にとっては【裏を返す】と言いんす
     さてさて、初めて二人が会った日より染め屋久蔵は前にも増して働くようになりんした
     来年の弥生15日に高尾が嫁に来てくれると言うことを信じて
     しかし高尾太夫の方はそうはいきんせん
     三浦屋の方に高尾の客の大名、阿部伊周より身請けの話が来ておりんした
     二人の恋の行方はどうなるんでありんしょう



【神田 紺屋】

弥介   だから言っただろうが、そんな口約束信じるなって

久蔵   花魁は指切りまでして誓おうと言ってくれたんだ!

弥介   良く言うだろ?「遊女に真なし」って
     あっちも好きだ、こっちも愛してるって言うのが仕事なんだろうが

久蔵   だけど…

弥介   だいたい身請けの先も五十万石の大名だろ?
     今までの借金もなくしてくれて、行った先では贅沢三昧
     遊女なんてそんなもんだっつーの

久蔵   本当に花魁は身請けされちまうんだろうか…

弥介   さぁな、でもお前は真面目すぎるんだよ
     これも勉強のうちだと思えって

     これで良いんだよ
     傷は浅い方が良い

久蔵   弥介?お前…

りん   こんにちわ~!久蔵さんいらっしゃいます!?

弥介   げっ!お嬢

りん   あっ弥介さん!またここで、怠けてたんですね
     駄目ですよ、着物問屋は暇なわけじゃないんですからね

弥介   はいはい

久蔵   いらっしゃい、おりんちゃん今日も儲かってるかい?

りん   儲かってますよ
     この前久蔵さんが染めた布がとっても評判良くって、たくさん売れてるんです!!

久蔵   ああ、ありがとう・・・
     あの色なぁ・・・

りん   あの色合い、とってもいいですよね

久蔵   (ぼそっと)似合うかなぁ…って

りん   ・・・うぅ

弥介   ぷ

りん   何よ弥介さん!!

弥介   いや、なんでもないが、お嬢は用事があったんじゃないのか?

りん   そうよ!!頼んでた布をもらいに来たの!!

弥介   そんなの他の使用人に言えばいいだろうに

りん   私が来たかったの!!

久蔵   他に働いてる人達も忙しかったのかい?

りん   うぅう…

弥介   ほーら、お嬢これから吉原に行くんだろう?

久蔵   吉原に…?

りん   花魁達に頼まれた着物を届けに行くんです
     着飾るのが商売だなんて花魁なんて良いお仕事ですよね?

久蔵   …そういう人たちばっかりじゃないんだよ、おりんちゃん
     
りん   でも…お金で体を売ってるんでしょう!?

久蔵   ああ、頼まれた布だったね
     すぐ持ってくるよ

りん   ああーーーーーーーー!!久蔵さんはあの女のことばかり

弥介   お嬢、あんまり言ってやんなさんな

りん   私の方がずっと前から好きだったのに!!

弥介   それこそ、せん無きことだろう?
     誰かが誰かを思う気持なんて止められるもんじゃねーよ

りん   花魁なんて…金でその思いを売ってるわけでしょ!?
     ただのけがらわしい女じゃないっ!!

弥介   それはお嬢がそういう立場じゃなかったから言えることだ

りん   …っ

弥介   あいつらは売られたり借金の形に地獄に落ちた女たちだ
     でもそんな泥の中でも誰かに摘まれようと蓮のように咲こうとしてるだけなのさ
     お嬢からみたらただの身売りかもしれねぇが
     お嬢に彼女らを馬鹿にする権利はねぇ

りん   …ごめんなさい

弥介   わかったならいいんだ
     あーでもなぁ…。その久蔵の好いてる相手が身請けされちまうって話だからなー
     
りん   身請けって何?

弥介   見世にある借金を全部返済して、家に受け入れるってことだ
     まぁ独占するってこったな

りん   つまり愛人にってこと?

弥介   そういうこと
     お嬢にもまだ望みはあるかもな

りん   そっか…うん。望みはあるよね!

久蔵   望み?なにか願い事でもあるのかい?

りん   久蔵さん!!別になんでもないですよ~

久蔵   おりんちゃんも年頃だからなぁ。はい頼まれてた紺染め

りん   わぁ!良い色!さすが久蔵さん。おっ父さんも褒めてたのよ

久蔵   着物問屋の店主がかい。それは嬉しいことだ

弥介   お嬢、俺はどうだい?

りん   弥介さんは、うちで働いてる人達の中でよく働くけど女遊びが激しい、って言ってたわよ

弥介   失敬な。女性を愛するのは当然のことだろうが

久蔵   度が過ぎるってことだ。…ん?
     弥介、お前は身を固めようとしたことはないのか?

弥介   いいんだよ、そんなことは
     それより、お嬢いいのかい?こんなにのんびりしてて

りん   あ!もう行かなきゃ!!
     ほら、弥介さんも一緒に!

弥介   はいはい

久蔵   ああ、またいつでもおいで
     
りん   はぁーい





りん   よし!ここが遊郭三浦屋ね!「いざ、参らん。敵は三浦屋に在り」よ

弥介   お嬢、今日は旦那様の代わりに着物を届けに来ただけなんだぞ
     誰も戦おうなんてことは…

りん   すーみーまーせーん!!神田の着物問屋でーーーーーーーす!

弥介   聞いちゃいねぇよ…

りん   頼まれていた着物届けに参りました!!

吉平   ああ、いらっしゃいませ。使い、ご苦労さまでございます
     …申し訳ないのですが、少々お待ちくださるでしょうか?

りん   はぁ

弥介   どうかなさったのですか?

吉平   …只今店主が不在でして、それに問題ごとがたてこんでおりまして…

弥介   問題ごと?

吉平   ええ。ですので奥の間でお待ちして…

富    離してよ!!私はこんなとこ来たくなかったの!!遊女なんてまっぴら!!

吉平   お黙りなさい!あなたはここに売られてきたんです
     その借金を返すために働くのは当然です

富    男に体売ってまですることなの!?

吉平   それが吉原です

富    帰してよ!私を家に帰して!!

吉平   どこに帰ると言うのです?あなたは父親に売られてきたのですよ

富    ふ…ぐす(泣き始める)

りん   (こそっと)どういうこと?

弥介   親に売られてきたと言うことさ

りん   そんな!むりやり!?

弥介   そういう娘たちばかりなんだよ、ここは…
     しかし、ああいう気の強い子だとここでは辛いだろうに

りん   ……

高尾   どうしたでありんすか?いたく騒々しい

吉平   太夫!!

弥介   (小声で)あれが高尾花魁だよ

りん   …………ぅ

弥介   お嬢?

りん   …綺麗な人

弥介   ぷ。まぁこの見世一番の花魁だからな

高尾   その娘はどうしたでありんすか?

吉平   本日売られてきた娘なんですが、花魁になりたくないと駄々をこねるもので…

富    帰してよ!私は体なんて売りたくない!!

高尾   では帰りなんし

富    えっ!?

高尾   吉平、この娘を帰してやりんなし。

吉平   花魁!お戯れがすぎます!!

高尾   ただし買った分の金はきちんと返してもらいに行きんなまし

富    そんな!!そんなことになったらみんなおまんま食べれなくなって飢え死にしちまう!!

高尾   甘えなさんな!
     お前さまだけがそんな不運だとお思いでありんすか?

高尾   ここの娘たちは親兄弟に売られてきた者ばかりでありんす

富    私は…私は……

高尾   でも思いなんし
     お前さまは、お前様の体で親兄弟を食わせてやることができるのでありんす

富    …え?

高尾   ここに売られたかぎり辛いこともありんしょう
     好いた男もいないうちから、名も知らない男に抱かれることもありんしょう

高尾   でも思いなんし
     お前さまがいたから家族はおまんま、たらふく食べれると言うことに

富    みんなひもじい思いはしなくていいの?

高尾   誇りに思いなんし。それがお前様の価値でありんす

富    …わかった

高尾   「わかったでありんす」

富    …わかったでありんす

高尾   良い子でありんすなぁ。お前さま、名前は?

富    とみ…

高尾   とみと言うと富士の山でとみでありんすか?

富    そう!心が富むようにっておっかさんがつけてくれたんだ

高尾   ふ…ふふふ、ほほほ。ほほほほほっ
     富士の山のとみか、これは良いでありんす

高尾   吉平、この娘をわっちの禿(かむろ)につけておくんなまし

吉平   花魁!?そんな、とうのたった娘など…

富    禿って?

高尾   わっちの妹分になることでありんす
     わっちの着付けの手伝いや、荷物持ちが仕事でありんす
     そして姐のわっちが花魁になるすべを教えるんす

富    はっはい!!わかったでありんす!

高尾   富士の山のようにおなりなさい。高尾の山よりもっともっと高く
     この国の一番であるように、この吉原で誰よりもすばらしい花魁になれるように

     とみ、新しいお前さまの名前をあげんしょう

富    どうして?

高尾   これからのお前さまは今までのとみではないのでありんす
     辛いことがあっても本当のお前さまと違うと思えば耐えられましょう
     本当のお前さまが帰ってくるのはここから出た時でありんす

     お前さまはこれから藤紫と名乗りなんし
     富士の山から頂き、藤の花のように咲き誇りなまし
     そして…

富    そして…?

高尾   かの「光る君」が永久に愛した女性、藤壺の方のように、誰かの一番になれるように

富    ありがとうございます!!

高尾   「ありがとうございんす」

富    ありがとうございんす!!

高尾   吉平、よいでありんすな?

吉平   …まったく、花魁は……
     (りんたちを見て)ああ、すみませぬ。お待たせしてしまい申し訳ありません

弥介   いえいえ

高尾   あら、旦那様は確か、久蔵さまのご友人の…

弥介   ああ、以前はどうも
     でも今日は神田の着物問屋の使いです

高尾   そうでありんしたか。では是非またお越しくださるのを心より楽しみにしておりんす

弥介   (にやにやしながら)はい~

りん   ちょっと!

高尾   …こちらのお嬢様は?

りん   あっちにもこっちにも同じこと言ってるのね、あなたって!

弥介   お嬢

りん   そうやって久蔵さんのこともたぶらかしたの!?

高尾   久蔵さんのことをご存知でありんすか?

りん   知っててもあなたには関係ないわよ!もう身請けされるんでしょう!?

高尾   身請け?

りん   妾(めかけ)になる身でありながら、久蔵さんをたぶらかさないで!!

高尾   わっちが身請け…でありんすか?

りん   とぼけないでよ!!

高尾   吉平、どういうことでありんすか?わっちに身請け話が出てるなど初耳でありんすが

吉平   ………ぁ

高尾   吉平、親父様はどこでありんすか?
     人を待たせるまでの用事とはなんでありんしょう

吉平   ……店主は阿部さまの所であります

高尾   阿部様の?

吉平   …阿部様から再三のお呼びがかかっておりまして

高尾   それは、わっちの身請け話のことでありんすか?

吉平   …………

高尾   吉平

吉平   …おそらく

高尾   そうでありんすか
     藤紫、部屋に帰りんしょう

りん   ねえ!なんで何も言い返さないの?

高尾   わっちの体はわっちの物ではないからでありんす

りん   それって身請けを認めるってこと?

高尾   言葉よりも態度で示すものでありんしょう



高尾退場



りん   いったいどういうこと…

弥介   まあ、身請け先が本当の金持ち、お大尽様だってことだろう?
     そっちを選んだってことだけだ
     これで久蔵も目が覚めるだろよ…

りん   でも…

弥介   「遊女に真なし」惚れた腫れたは野暮ってことだ




藤紫   やっとわっちの正体もわかった所でありんすが、そろそろ明け鴉が鳴くお時間でありんす
     気持ちを確かめ合ったと思った二人でありんしたが、目の前にはだかる身請けと言う壁
     来年の弥生15日、本当に二人はお会いすることができるのでありんしょうか?
     次で馴染みの三度目、ではまたのお越しをお待ちしておりんす

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ヾ(๑→ˇ㉨←)ノ 2012-02-24 未分類 トラックバック:0コメント:0

声劇用台本 

======================================================================
■タイトル

 後ろ向きラジオ -12/23 23:55-

==========================================================================
■ジャンル

  コメディ

==========================================================================
■登場人物
 
 DJ  (♂):深夜ラジオ番組のディスクジョッキー

 リスナー(♂):新田 忠司[にった ただし]
         大学受験を控えた高校生男子。独り言。ツッコミ担当。

 ゲスト (♀):島田 奈美[しまだ なみ]
         謎のアイドル(?)にこやかにキレる。

==========================================================================
■配役(2:1:0) 所要時間:12分~
 
 DJ(♂)[L41]:
 ゲス(♀)[L28]:
 リス(♂)[L33]:

  ※L**:セリフ数
==========================================================================
■台本

 リス:「あーあ、勉強だるいなぁ。」

   (天井裏の小部屋に監禁されてる息子)

 リス:「ったく、終わるまで部屋から出てくんなとか。どんだけだよ。」

   (部屋の中を見回す) 

 リス:「この部屋、なんにもねーな・・・。ん?なんだこれ?」

   (机の上にあった機械を手に取り、ボタンを押す) 

   (SE:ラジオのチューニング音)
 
 DJ:「はぁーい。皆さん、こんばんは。
     12月23日、11時50分になりました。

 リス:「うお! ・・・これ、ラジオか? うわ。初めて見た。
     そういえば、ラジオとか聴いた事ないなぁ。」

 DJ:「ミッドナイト・レィディオ。【ハリキリ・トゥデイ】の時間です。
     今夜もお相手は、『貴方の聴覚野を酔わせたい。』ソルト・ペッパーです。」

 リス:「ま、いいや。CD代わりに聴きながらやるか。」

 DJ:「いや~、すっかり寒くなりましたね。気がつけば、もうクリスマスですね。」

 リス:「嫌な季節だ。」

 DJ:「去年のクリスマスは、どんなクリスマスを過ごされたんでしょうか?
     ロマンチックな夜をステキな恋人と一緒に過ごされた方もいるかもしれませんね。」

 リス:「・・・俺、何してたっけな?
     あ、直人(なおと)のヤツ・・・彼女出来たんだっけ。
     やっべ、今年、俺マジで独りきりじゃん?」

 DJ:「私は去年のクリスマスと言えば・・・
     『ジャックダニエル』と書かれたラベルのアップと
     激しい痛みを最後に記憶がありませんけどね。ははは。」

 リス:「イヤだねー、大人は。二日酔いになるまで酒飲んで、何が楽しいんだか。」

 DJ:「目が覚めたときには、もうサンタも家に帰ってる時間で。
     着ているシャツが血で真っ赤に濡れていましたね。」
 
 リス:「おいおい?」

 DJ:「色合いがすっかりサンタになってしまう所でした。はっはっは。」
 
 リス:「笑えねーよ。」

 DJ:「危うく、トナカイ無しで空を飛んで星になってしまうところでした。」

 リス:「地上に留まれて良かったな。」

 DJ:「ということで、今日の星座占い。いってみましょう。」

 リス:「占いかぁ。・・・ん? 日付変わったっけ?」

 DJ:「アナタの星座は、今日は何位だったんでしょうね?」

   (手が止まりラジオを睨みつける)

 リス:「え? 今日って・・・今日!? 残りあと数分だぞ。必要か・・・この占い。」

 DJ:「今日の星座占いをリスナーの皆に伝えてくれるのは・・・この人!」

 ゲス:「皆さん、こんばんはー。島田奈美です。」

 リス:「誰?」

 DJ:「はい。ということで、島田奈美さんが来てくれました。
     今夜で、この番組に来てくれるのも2回目に・・」

 ゲス:「3回目です。」

   (できれば食いぎみに、DJ)

 DJ:「3回目。はい、3回目になりますね。」

 ゲス:「はぁい。そうです。よろしくお願いしまーす。」

 DJ:「はい。よろしくお願いします。
     前回、この番組に来てから沢山のリスナーの方々からね。
     えー、是非、奈美さんを呼んで欲しいというハガキを戴きまして。」

 ゲス:「本当ですかぁ? ありがとうございます。」

 DJ:「少し、ハガキの方を紹介したいと思います。」

 ゲス:「はい。」

 DJ:「北海道釧路市愛国西にお住まいの、ペンネーム:妹の右腕さん。」     

 ゲス:「ありがとうございまーす。」

 DJ:「力関係がよく分かるペンネームですね。」

 ゲス:「良いですね。自分の立場をわきまえているなんて素晴らしいですよね。」

 リス:「このゲスト、ズレてんなー。」

 DJ:「えー、”ソルトさん、こんばんは。”こんばんは。
     ”11月4日にゲストとして出演した、シマダ・ミナさんがとても好きになりました。
      是非! また出演してほしいです。お願いします。”という・・・」

 ゲス:「うふ。"シマダ・ミナ"じゃないぞ。ちゃんと覚えてないと、しょーちしないぞ。
     私、こーいうの根に持つタイプだぞー。ラジオで本名バラしちゃうぞ。うふ。」

 DJ:「はい? ちょっと!ハガキ取らないで・・・ちょ、イタッ!」

 ゲス:「オオイズミ・コウジ! ・・・あれ、タカシ? これ、なんて読む・・・あっ!」

 DJ:「はい。えー、関越自動車道 大泉インターで、工事が予定されているとかないとか。
     詳しく情報が分かり次第、後ほどお伝えしたいと思います。
     たぶん工事はしてない・・・です・・・が、次のハガキを紹介したいと思います。」

 リス:「軽く事故ったろ。今。」

 DJ:「島根県出雲市中野美保南にお住まいの、ペンネーム:爪に挟まった昨日のチョコレートさん。」

 リス:「てか、そこまで住所言う必要あるか?」

 ゲス:「ありがとうございまーす。」

 DJ:「”奈美さんのデビューの頃から大ファンで。しかも、大好きな【ハリキリ・トゥデイ】に
      出演しててビックリしました。すごく幸せな時間でした!
      是非、また・・・というかレギュラーになってください!
      では、体に気をつけて頑張ってください!”というハガキを頂きました。」

 ゲス:「うふ。今回デビューなんですけどね。
     大ファンって言うくらいなら、私のブログを毎日チェックして
     出演番組を下調べしておくくらいすべきなんじゃないかな?うふ。
     てきとーぶっこいてると、危険物送りつけるぞ! なんちゃってね。うふ。」

 リス:「本気だ。この女やりそうだな。」

 DJ:「はい。では、ハガキを読ませてもらったお二人には、番組特製ステッカーをお送りします。」

 ゲス:「えーと、しまねけん、いずもし・・・あっ! ペン返してくださいよ!」

   (マイクから離れて、または小声で)

 DJ:「勝手にリスナーの住所を書き留めちゃだめっ!」

 リス:「DJファインプレーだ、グッジョブ。」

 DJ:「では! 気持ち切り替えて、星座占いの方を伝えていただきましょう! お願いします。」

 ゲス:「はい。いつも通り時間の都合で、トップと最下位だけを発表しますね。
     発表されなかった星座の方は、【ハリキリ・トゥデイ】の公式ホームページで
     公開していますので、そちらで確認してください。」

 リス:「だから、一日の終わりに占い聴いてどーすんだよ・・・。」

 ゲス:「では、今日一番運勢が良かった星座の方は・・・牡羊座のアナタ!
     おめでとーございまーす!
     気になる異性を夕食に誘うと、一気に二人の距離が近づくチャンス!」

 リス:「はい、手遅れでーす。」

 ゲス:「では、気になる最下位の星座は・・・魚座!」
 
 リス:「ゲッ! 俺かよ?」

 ゲス:「とにかく今日は最悪な一日でした。
     数百円の買い物をしたら
     一万円札しか財布に入っておらず。
     そんな時に限って自分の後ろには長い列。
     更にレジには研修中の新人さん。
     プレッシャーでお釣りの小銭を落としたり。
     バーコードがうまく読み取れず、焦りに拍車がかかる。
     という嫌な雰囲気に包まれる。
     そんな一日になるでしょう。」

 
 リス:「具体的だな! でも、それは最悪ってことでもないだろ。」

 ゲス:「そんな魚座さんを助けるラッキーアイテムは・・・
     【12月23日発売、島田奈美のデビューシングル】です。
     良かったですね!
     これで、運気をアゲアゲにしてくださいね!」

 リス:「さらっと告知を挟んだろ、いま。」

 DJ:「はい。奈美ちゃんありがとうございます。
     明日の星座占いは同じくこの時間でチェックして下さいね。」

 ゲス:「私。今日の占い2位だったんですよー?」

 DJ:「2位? 奈美ちゃん、星座はなんだっけ?」

 ゲス:「へびつかい座ですぅ。
     ゲストのプロフィールくらい読んどけって感じですー。うふ。」

 リス:「ぶっ! 【へびつかい】って、あの【13星座占い】か?
     って事は・・・俺、魚座のままでいいのか?」

 DJ:「あー・・。それで、占いの結果はどうだったのかな?」

 ゲス:「【くじら座】の人との仲に進展がある日だそうです。」

 リス:「くじら座?? ってことは、【13】じゃなくて【14星座占い】かよ!?
     マニアックな占いやってるなぁ~。」

 DJ:「くじら座の人ねぇ。ほー。
     奈美ちゃんは、心当たりなんて、あったりするのかな?」

 ゲス:「はい。去年のクリスマスに別れた恋人が。」

 DJ:「え? あぁー・・・。”お父さんが【くじら座】”って話じゃ・・・」

 ゲス:「いいんです。私にとって最初で最後の恋だったかもしれません。
     でも、その思い出を胸に生きていけますから。」

 リス:「途端に重いな。」

 DJ:「あの、奈美ちゃん? そーじゃなくて」

 ゲス:「ええ、突然イブの朝にメールが来て、一行・・・”別れよう”って。
     何も思い当たることなかったから、パニクっちゃって。
     何度も電話したんだけど、出てくれなくて。
     だから家まで行ったんだけど居なくて、だから私・・・」
     

 DJ:「はい!そうですか。今年も良いクリスマスが過ごせるといいですね。」

 ゲス:「はい? 聞いてました? 私の話。」

 DJ:「あ、いや。台本に・・・あー。はい、ということで。ね?
     今夜はこのようなステキなゲストの奈美ちゃんに
     来ていただいたのですから、奈美ちゃんの歌をリスナーの皆さんに
     聴いてもらいたいと思うんですが、どうでしょうか?」

   (冷めた顔に棒読み。無感情の奈美)

 ゲス:「・・・・・・えー、本当ですカー。うれしいですー。」

 DJ:「ははは・・・。では、曲紹介の方をお願いします。」

 ゲス:「本当に本当に好きな人とお別れしなくちゃならなくて、悲しいけど。
     でも、”前を向いて進んでいこう!”という想いを込めた歌です。
     聞いてください、【私は使い捨てカイロ】。」

 リス:「曲名が後ろ向きぃー!」

   (それから、延々と後ろ向きな歌詞が流れる)

   (テンション低いDJ)

 DJ:「はい。島田奈美ちゃんのデビュー曲で【私は使い捨てカイロ】でした。」

   (テンション低いリスナー)

 リス:「・・・なんか、クリスマスとか、恋人とか
     凄く要らないんじゃないか・・・って感じになってきた。」

 ゲス:「どうでしたかぁ~?」

 DJ:「あ、いや。・・・人とのつながりとか、温かさとか幻なんじゃないかって思えてきて。
     それが冷めた時の痛みを考えたら・・・
     もう、最初から独りでいいような気がしてきた。うん。なんか、肩が重い。」
   
 リス:「DJ。お前もやられちまったか・・・。」

   (DJ、なんとかテンションを振り絞り)

 DJ:「はい。それでは、今夜の番組はこのへんで。ゲストは」

 ゲス:「事務所への私生活救援物資を大募集中の島田奈美と」
 
 DJ:「『貴方の鼓膜をプルプルさせたい。』ソルト・ペッパーでした。
     それでは、良い夜を・・・See You Next Time。」

 リス:「うー。なんか、勉強するパワーも呪いの歌にもってかれた感じ・・・。
     でも、勉強やんなきゃ・・・。」

   (時報:00:00を告げる。ポーン♪)

 DJ:「はい、こんばんは。【グレイトフル・イエスタデー】の時間です!」

 リス:「番組名が後ろ向き! 過去にこだわり過ぎだろ・・・。
     俺は寝る。明日がんばる! これ前向き! よし、おやすみ!」
 
 DJ:「日付が変わりました。12月24日。クリスマスイブです。」

 リス:そして、その年のクリスマスは『シングルベル』という言葉が再流行。
    一体何が起きたのか?
    俺の脳裏によぎったのは、深夜に電波で飛ばされた人の心を侵食する歌。
    アレが原因じゃないのか・・・?
    かくいう俺も、シングルベル。
    皆さんは、良いクリスマスを過ごしてくれ。

 DJ:「『貴方の中耳を火照らせたい』ソルト・ペッパーでした。『Merry Christmas』」

   (ラジオを消す音:ブツッ)

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<おしまい>

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(2011- 7- 8 rev)
(2009-12-19 up)

2011-11-08 未分類 トラックバック:0コメント:0

   題名:少年と門番
   劇団:無所属
   作者:都基 トキヲ
 ---------------------------------------------
 著作権について
 ・本ページで公開されている作品の著作権をはじめとするすべての権利は
  全て作者が保有いたします。
 ・このページからダウンロードできる脚本は全て無料で読んでいただいて
  結構です。ただし、舞台等で御利用の際は、作者からの上演許可を取っ
  ていただくようお願いいたします。
 ・必要に応じての改編等も、作者への許可の上行って下さい。
 ・著作権料が発生する場合、指定された額を作者へ送金を忘ないように
  お願いいたします。本作品おける著作権料は、下記に示す通りです。

 ---------------------------------------------
  小学校、中学校、高校、その他学生の無料公演・・無料
  アマチュア劇団の公演、学生の有料公演・・・・・5000円
  プロの劇団の公演・・・・・・・・・・・・・・・全チケット収入の1割
    (全チケット収入の一割が5000円に満たない場合は5000円)

    [2]の場合、公演の2週間前までに、
    [3]の場合、公演後2週間以内にお支払いください。
 ---------------------------------------------
都基トキヲ

キャスト
フランツ
アルマン・シュバルツ
ジェームズ・グラウ(文字数の都合上、“グラウ”と表記する。)
フランツの母


中世ヨーロッパ風の門。
雪が降る冬の日、少年が小さな墓標に花を手向け手を合わせている。

フランツ「・・・アルマン。あれからもう四年も経ってしまったね。
     あの日も今日みたいにとても寒かった。
     あの頃は本当に楽しかったね。君がいて、ジェームズがいて、僕がいて。
     それだけで幸せだった。君がいつも話してくれた物語も、
     いつも面白かったし。
     大好きだったなぁ~・・・君が話す物語。実はね、僕は君が門番じゃ
     なく、本当は作家か何かじゃないかって思ってた時期もあったんだ。
     それ位、君の話は面白かった・・・。
     『海を泳いだサルの王様』、『ダンスが下手な三人のお姫様』。
     あ、『ウサギがこわい魔術師』なんてのもあったね!
     ・・・・でも、僕が一番好きだったのは、
     『憂いの木』の話だった・・・」

暗転
明るくなると墓標が消え、(もしくは墓標と門とで舞台を分けても可。)
代わりに門番のアルマンが立っている。
暇そうに欠伸をひとつ。

アルマン「ふあぁぁ・・・今日も平和だなぁ・・・・」

そこに門とは逆の方向からジェームズがにこやかに駆けてくる。

グラウ 「おはようございまーす!
     いやぁ今日もいい天気ですね!!」

きょとんと不思議そうな顔をするアルマン。

グラウ 「相変わらず我らがリヒト王国は平和極まりないし、
     こんな素敵なことは他には無い!!そう思いませんか!?」
アルマン「・・・?」
グラウ 「一昨年に新聖帝国と平和協定を結んでからというもの、交易は右肩
     上がり。国の経済は潤う一方です!特産品の小麦だって、
     去年はここ何年かで一番の豊作だったし。それに・・・」

ジェームズの言葉を遮るように、アルマン。

アルマン「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
グラウ 「はい?」
アルマン「話の途中で悪いんだが・・・」
グラウ 「何でしょう。」
アルマン「(ジェームズを示し)・・・誰?」
グラウ 「え?」
アルマン「いや、だから・・・・誰?」
グラウ 「ああ僕ですか!?
     すいません申し遅れましたが、自分は本日よりこの“第二の門”に
     配属することになりました、門番見習いのジェームズ・グラウです!!」
アルマン「ジェームズ・グラウ・・・あ、君か。門番長が言ってた新米は。」
グラウ 「はい!!」
アルマン「俺はアルマン・シュバルツ。」
グラウ 「知ってます。さっきゴルトさんが言ってました。」
アルマン「門番長が?」
グラウ 「『君の上司は、俺の後を継いで門番長になる男だ』って。」
アルマン「そんなこと言ってたのか!」
グラウ 「はい。だから、『何かあったら、彼に頼るといい』と。」
アルマン「俺はそんな器じゃないんだが・・・」
グラウ 「若くして一目置かれてるんですよ!すごいじゃないですか!!」
アルマン「そうか?」
グラウ 「絶対そうですよ!!!」

ジェームズのあまりの勢いのよさに思わず笑ってしまう。

グラウ 「どうかしました?」
アルマン「いや、さっきからやけに元気が良いな。」
グラウ 「あっすいません!あんまり楽しみだったので、つい浮かれてしまって・・!!」
アルマン「そんな楽しめるような仕事じゃないぞ?確かにヒマだけどな。」
グラウ 「わかってます!国の有事の際には敵を門で食い止める、大変な仕事だと
     いうことは!!」
アルマン「へぇ」
グラウ 「ただ、子供の頃からの夢だったんですよ。」
アルマン「門番になることがか?」
グラウ 「はい。 というか、何かこの国のためになるような仕事がしてみたくて。」
アルマン「いまどき珍しいな。」
グラウ 「変、ですかね・・。」
アルマン「いや、いいと思うぞ。
     俺の知り合いでも一人いるんだ。そういうやつが。」
グラウ 「そうだったんですか。それは是非会って語り合いたいですね!!」
アルマン「よくここにも来るから、そのうち会えるんじゃないか?」
グラウ 「ここに?」
アルマン「そう。ここに。」

と、遠くからフランツがアルマンを呼ぶ声が聞こえる。

アルマン「ほら来た。」
フランツ「おはようアルマン!」
アルマン「おはようって、もう昼だぞ。」
フランツ「あ・そうだね。こんにちわ。」
アルマン「挨拶くらい、ちゃんとできるようになれよ。」
フランツ「はいはい。(と、ジェームズに気づく) あれ、この人誰?」
アルマン「ここの新入りだよ。」
グラウ 「こんにちわ!門番見習いのジェームズ・グラウです。」
フランツ「こんにちは!」
アルマン「こいつはフランツ。」
フランツ「フランツ・ヴァイスです。」
グラウ 「・・アルマンさん。もしかしてこの子がさっき言ってた・・・」
アルマン「そうだよ。」
グラウ 「あ、そうなんですか!僕はてっきり同年代かと・・」
フランツ「何、何の話?」
アルマン「実はさっき、お前のことを話してたんだ。」
フランツ「僕のこと?」
アルマン「ジェームズは子供の頃から、この国のために働くことだったんだと。
     お前の夢と似てるなと思って。」
フランツ「だから門番に?」
グラウ 「まぁね。ずっと夢だったんだ、門番になることが!!」
フランツ「うーん・・・でも、どうせなら軍にでも入りたいたいと思わなかったの?」
アルマン「それもそうだな。」
グラウ 「いや・・その、戦争とかそういうのは苦手で・・・」
フランツ「門番だって、いざとなったら戦うじゃないか。」
グラウ 「門番は、門を守るために戦うじゃないか。門を守ることが、国やこの国に
     住む人を守ることになるんだ。だから、何かを倒すために戦う
     のとは違うんだよ。」
フランツ「よくわかんないよ、そんなの。戦うことには違いないじゃないか。」
グラウ 「はは、まぁそうだろうね。」
フランツ「僕だったら、絶対軍に入ると思うけどなぁ。」
グラウ 「君は大きくなったら何になりたいんだい?軍人になりたいの?」
フランツ「まぁね。でも、それだけじゃないよ。」
グラウ 「それだけじゃない?」
フランツ「僕はね、英雄になりたいんだ!」
グラウ 「英雄かぁ!すごいねぇ」
アルマン「無理だって、何度も言ったんだが諦めないんだ。」
フランツ「だって、諦める必要が無いんだもん。」
アルマン「リヒト王国は極力戦争はしないんだ。国も軍も小さいし、難しい
     に決まってるだろう。」
グラウ 「たしかにそうですね。戦争があるから、英雄が生まれるわけですからね。」
フランツ「あーあ、戦争じゃなくても、せめて帝国みたいに、領地拡大戦線
     とかやれば、英雄になるのもゆめじゃないんだけどなぁ。」
アルマン「何言ってんだ。あんなの戦争と同じじゃないか。争いごとはないに
     こしたことはないんだから、そんなことを言うもんじゃない。」
フランツ「でもさ、領地拡大のためなら国も広くなるんだよ?いいじゃん。」
アルマン「バカ。そういう問題じゃないだろ。」
グラウ 「そうだフランツくん。門番にしなよ門番!」
フランツ「門番?」
グラウ 「君は軍も門番も似たようなもんだと思うんだろ?それなら門番だって
     いいんじゃないかな。」
アルマン「そうだな。フランツそうしろ。」
フランツ「え~・・だってアルマン、いつも暇そうじゃないか。暇なのはいやだなぁ。」
アルマン「ま、ここは“第二の門”だからな。暇が嫌なら“第一の門”に行けばいい。」
フランツ「“第一の門”?」
グラウ 「僕が説明してあげようか。」
フランツ「え?あ、うん。」
グラウ 「フランツくんは、この国・・リヒトの人々の大半がこの市に住んでる
     ってことは知ってるよね?」
フランツ「うん。」
グラウ 「市の中にある、城を中心に、この市全体をぐるっと囲んでいるのが、
     この壁。
     で、更に外側を大きく囲んでいる壁があるんだ。つまりこの市は二重の壁
     で守られてるんだよ。そしてその外側の壁にあるのが、さっき言った
     “第一の門”。内側の壁にあるのが“第二の門”って呼ばれてるんだ。
     まぁ、“第一”とか“第二”って言っても、それぞれの壁にはたくさんの
     門があるから、二つしか門が無いってわけじゃないんだけどね。」
フランツ「へ、へぇ・・・」
グラウ 「わかったかい?」
フランツ「う、うん。・・・・正直大体知ってたけどね。」
グラウ 「あ!!そうだよね!!!」
アルマン「俺もフランツも、この市に住んでるわけだからな。
グラウ 「またしゃべりすぎちゃったなぁ~!!」
フランツ「あ、でもさ・・」
アルマン「ん?」
フランツ「でも、なんで二重に壁があるんだろう。」
アルマン「守りを固めるためだろう?」
フランツ「でも、戦争なんてしないんだから、そんな必要ないんじゃない?」
アルマン「しないからこそ、必要なんだよ。なにかあったときに、市の中心まで
     ことが及ぶまで時間をかせげるだろう?」
グラウ 「たしかにそれもあるんですが、それだけじゃないみたいですよ。」
フランツ「それだけじゃないの?」
グラウ 「実は僕、昔そのことについて調べたことがあるんですよ。」
フランツ「そうなんだ。」
グラウ 「この国の名前、『リヒト王国』の『リヒト』の意味は知ってるよね?」
フランツ「うん!『光』だろ?」
グラウ 「あたり!そしてその『光』にも意味があるんだ。それは・・」
アルマン「『神の御加護の光』だろ?」
グラウ 「そう。『この国に、神の御加護がありますように』と、初代国王様
     が願いを込めて、この名前をつけたそうです。実際、光の恵みおかげで、
     小麦の生産がとてもさかんな平和な国になりましたからね。」
フランツ「で、なんで名前が壁と関係あるの?」
グラウ 「四代目の国王がすごく強欲で、悪政で有名な酷い王様だったんですよ。」
アルマン「それで、その王が『神の御加護』を独占するために、壁を作ったんだろ。」
グラウ 「なんだ、知ってたんですか?」
アルマン「俺も昔、話のネタにしようと思って調べたんだよ。」
フランツ「ふぅ~ん。」
グラウ 「さすがアルマンさん!ゴルトさんに一目置かれているだけはありますね。」
アルマン「そうか?」
フランツ「あっゴルトさんで思い出した!!」
アルマン「何だ?」
フランツ「さっきゴルトさんに、『新米に伝え忘れたことがあるから呼んできてくれ』     って言われたんだった!!」
グラウ 「ゴルトさんが?」
アルマン「お前、そういうことは早く言えよ!!」
フランツ「ごめん!!」
アルマン「まったく・・・」
グラウ 「じゃあ、僕ちょっと行ってきますね!ゴルトさん、怒ると恐そう
     なんで。」
アルマン「そうだな。」
グラウ 「じゃあまた後でね、フランツくん!」
フランツ「じゃあね!!」

来た方向に走ってはけるジェームズ。

フランツ「ジェームズ、いい人だね!」
アルマン「ああ。真面目で元気がいいし・・・ちょっとおしゃべりなところがある
     が、いい門番になると思うぞ。」
フランツ「良かったね、いい後輩が来て!」
アルマン「もしかしたら、俺なんかよりずっと頼りがいのある門番になるかもな!
     俺の分まで頑張ってもらわなきゃ」
フランツ「年下に頼ってどうするんだよ」
アルマン「良いんだよ。いいか、人と人とが関わりあうときはだな、こう・・
     明らかにこいつが楽をしてだな・・・・」
フランツ「はいはい。もうその冗談は聞き飽きたよ。」
アルマン「そうか? でも、俺としてはお前の『英雄になりたい』って話のほうが
     飽きるくらい聞いてる気がするんだがな~」
フランツ「そんなことないよ。」
アルマン「いいやそうだって。だいたい、『英雄にないたい』っていうわりに
     一度も理由聞いたことないぞ?」
フランツ「り、理由なんて良いだろ・・」
アルマン「そんなこと無いぞ。理由は大切だ。 それとも、理由もなしに
     『英雄になりたい』だなんて言ってたのか?」
フランツ「う・・そうじゃないけど・・・・」
アルマン「それにおれ自身も気になってるんだよ。」
フランツ「カッコ・・良いから・・・」
アルマン「なんだそんな理由か!ミーハーなやつだな!!」
フランツ「嘘だよ。 ・・嘘に決まってんだろ!そんなの。」
アルマン「じゃあ、なんでだ?」
フランツ「英雄になれば、母さんを守ってやれるだろ?」
アルマン「フランツ・・・」
フランツ「うちは父さんがいないんだ。僕が母さんを守ってやらなきゃ。」
アルマン「そうか・・・」
フランツ「それに、楽させてあげられるしね。」
アルマン「何も英雄にならなくたって、守ることは出来るんじゃないのか?」
フランツ「う~ん・・・・」

フランツは考え込んでしまう。アルマンは『仕方ないな』という風にため息を
吐き、わざとらしく何かを思い出す。

アルマン「あ!」
フランツ「何?」
アルマン「いや、何でもない・・。でもなぁ・・もしかしたら・・・」
フランツ「え?」
アルマン「どうかなぁ・・でも・・・ううん・・・・」
フランツ「何だよ。気になるだろぉ?」
アルマン「もしかしたら、無理じゃないかもな。」
フランツ「ほんと!?」
アルマン「ああ。まぁ、“あの木”を見つけられたらの話だけど。」
フランツ「“あの木”?」
アルマン「・・・聞きたいか?」
フランツ「うん!!」
アルマン「それじゃあ聞かせてやろう!アルマン劇場のはじまりはじまり!」

フランツ、パチパチと拍手。

アルマン「昔々、あるところにハイムという男がいました。彼は植物を専門とする
     学者で、彼が見たことのない植物なんてありませんでした。
    “ある木”だけを除いては。」
フランツ「それが、さっき言ってた・・」
アルマン「そう!その木は『憂いの木』といって、人々の悲しみや苦しみを吸収して
     成長する不思議な木。憂いの木に咲く花は、見た者の本当の願いを
     叶えるという。
     ハイムその話を聞いたとき、どうしようもなく見てみたくなった。
     一人の学者として、見てみたかったんだろうな。
     しかし、文献には残ってはいるものの、その量は極わずかで調べようが
     無い。
     どうしたものかと悩んで、仲間の植物学者に聞いても、
     『そんなものあるわけがない』と馬鹿にされてしまいました。
     ハイムは悔しかった。 あ、自分をバカにされたことにじゃないぞ。彼は
     偉大な偉人が、その生涯をかけて書き残した文献を『ウソ』呼ばわり
     されたことが悔しかったんだ。
     だから彼はそれを証明するためにも、なんとしてでも憂いの木を見つめる
     と決意して、旅に出た。
     そりゃあもう、世界中のありとあやゆる場所を探し回った。
     しかし、広い草原、高い高い山、深く暗い森・・・どんな場所もくまなく
     探したのですが、いっこうに見つかりません。何度も諦めようと思った。
     でもそんなことは出来ないと、眠ることも忘れて彼は探し続けた。
     しかし、運命の女神は残酷だった。ジャングルに訪れ、その木を探していた
     ある日、彼は重い熱病に冒されたのです。」
フランツ「ええ!?」
アルマン「しかし、それでも彼は諦めなかった。熱がある体で歩いていると、
     次第に意識が朦朧としてきてしまい、人里離れた未開のジャングルでついに
     倒れてしまいました。熱のある彼の体は、もう、とうに限界を過ぎて
     しまっていたのです。
     薄れゆく意識の中で、『もうダメなのか・・・せめて最期にこの目で、
     たった一度でいい、この目で憂いの木が見てみたかった。』
     そう思いました。
     そして静かに目を閉じようとしたその時、ハイムの視界は白い風に
     包まれました。驚いて顔を上げてよくよく見ると、その白い風は無数の
     花びら。
     何が起こったのか理解できず、
     ぼんやり花びらの嵐を見ていると、そこには大きな木が一本
     立っていて、枝いっぱいに花を咲かせていることに気づきました。
     そう、彼は念願だった憂いの木を見つけたのです。
     あまりの嬉しさにしばらく見とれていると、それまで彼を苦しめて
     いたはずの熱がいつの間にか引いて体も軽くなって
     いることに気がつきました。」
フランツ「治ったの?」
アルマン「ああ。」
フランツ「じゃあその後、ハイムは木を持って帰ったんだよね。」
アルマン「花びらを一枚だけ、な。」
フランツ「え、一枚だけ!?それだけじゃ誰も信じてくれないよ?せめて枝くらい・・」
アルマン「ハイムには花びら一枚で十分だったんだよ。。」
フランツ「何で?」
アルマン「ハイムは自分の国に帰った後で、自らの著書に『憂いの木』のことについて
     書き記すことで、彼が信じた、偉大な植物学者の一人になれたからだよ。」
フランツ「え~・・・」
アルマン「それに、ハイムが熱が引いたことに驚いている間に、木は跡形も無く
     消え去ってしまったんだ。彼の目の前に落ちた、一枚の花びらを残して。」
フランツ「じゃあ、なんで熱は下がったの?願いはひとつだけなんだろ?」
アルマン「それは・・・ほら、あれだ。ハイムは木の存在を確認したいだけで、
     欲の無い人間だったから、木が“おまけ”してくれたんじゃないかな。」
フランツ「なーんか無理やりだなぁ。」
アルマン「そ、そうか?」
フランツ「うん。・・でも嫌いじゃない話だけど。」

静かに立ち上がるフランツ。

アルマン「帰るのか?」
フランツ「母さんのお使いがまだ残ってるんだ。
     街に行って薬を買ってこないと。」
アルマン「お前の母さん、どっか悪いのか?」
フランツ「ただの風邪だよ。ほら、冬だし。」
アルマン「そうか、ならいいんだが。」
フランツ「それじゃあ、また。」
アルマン「おう。」

少年は笑顔で去ってゆく。

アルマン「あいつも大きくなったもんだな・・・」

再び門番の仕事を始める。そこにフランツと入れ違えになるように、血相を変えて
ジェームズが駆け込んでくる。

グラウ 「た、大変です!!!」
アルマン「どうした、そんなに慌てて。ゴルトさんが何か怒って・・・」
グラウ 「ち、違います!!!」
アルマン「じゃあ熊でも出たのか?」
グラウ 「違います!!!」
アルマン「あ、熊はもう冬眠してるか。」
グラウ 「そうじゃありません!!!」
アルマン「・・・何があった。」
グラウ 「今、ゴルトさんのところに行ってきたんです。そうしたら他の門番隊の方
     がこれを!!!!」

荒々しく新聞を手渡す。アルマンはそれに目を通し。

アルマン「これは・・・」
グラウ 「新聞の号外だそうです。」
アルマン「『新聖帝国との関係悪化』?どういうことだ・・・」
グラウ 「わかりません。でも、
     一昨年結ばれた、帝国との平和協定が白紙になったようです・・・」
アルマン「そんな馬鹿な!!!協定は向うから持ちかけてきたんだぞ?」
グラウ 「『リヒト王国は国王自ら帝国への反乱を企てているとの密告があった。』
     これが向うの言い分です。」
アルマン「密告?」
グラウ 「はい。」
アルマン「リヒトが帝国に反乱を・・戦争をしかけると?」
グラウ 「そのようです・・。」
アルマン「なんてことだ・・。」
グラウ 「そしてここ・・・これが国王陛下公式の発表です。
     『私含め、我が国は反乱など一切企ててはおらず、全く覚えが無い。
      よって我々は新聖帝国の発表を完全に否定する。』」
アルマン「よかった。」
グラウ 「まだです。」
アルマン「まだ?」
グラウ 「最後に、『我々リヒトは不条理な闇に屈しはしない。』と・・。」
アルマン「これじゃあまるで、」
グラウ 「宣戦布告ともとれますね・・・。」
アルマン「・・・・・。」
グラウ 「・・・最悪、戦争ってことにも成りかねませんよね・・・?」
アルマン「ああ・・・相手はケンカっぱやい軍事国家だ。もしかしなくても、
     何かしらあるだろう。」
グラウ 「そうなったら、この国も、戦場に・・・・」

沈黙。

アルマン「ジェームズ、」
グラウ 「はい。」
アルマン「お前に、頼みたいことがある。」
グラウ 「なんですか?」
アルマン「・・あいつには話さないで欲しいんだ。」
グラウ 「え・・・」
アルマン「フランツにはこのこと・・・特に戦争になりかねないということは、
     黙っておいてくれないか。」
グラウ 「僕は、構いませんけど・・・。でも、僕が言わなくても、あの子が
     知るのは時間の問題じゃあ・・・・」
アルマン「それでもいい。あいつはまだ、知らないほうがいいだろう・・・」

暗転


明転
門の前。
どこか重々しい雰囲気のアルマンとジェームズ。

グラウ 「あれから一ヶ月、帝国との仲は悪化する一方ですね。」
アルマン「向うは今、領地拡大のための戦争で勢いを増してるからな。
     一度火がつくとそう簡単には止まらないだろ・・・。」
グラウ 「戦力の差だってあるのに・・・・。」
アルマン「倍数どころの話じゃないからな。どうにかならないものか・・・。」

アルマン、遠くにフランツを見つけ。

アルマン「あ、駄目だ。フランツが来た。
     ・・・・いいか、ジェームズ。練習した通りにやるんだ。」
グラウ 「はい・・。」

何も知らないフランツ、笑顔で登場。

フランツ「おはよう、ふたりとも!!」
アルマン「おはよう。」
グラウ 「おはよう、フランツくん。」
フランツ「今日もいい天気だね!」
グラウ 「あ、あぁ・・・」
アルマン「・・・」

場の雰囲気に耐えられず、二人から離れるジェームズ。

フランツ「今日もなんか話聞かせてもらいたくてさ、あんまり長くはいられない
     ど・・・」
アルマン「今日はそんな気分じゃないんだ。」
フランツ「・・どうしたの?」
アルマン「・・・・」
フランツ「・・・?」
アルマン「なぁ、フランツ・・」
フランツ「何?」
アルマン「もう、ここには来るな。」
フランツ「何で?」
アルマン「何でもだ。」
フランツ「いきなりどうしたんだよ。理由はなんだよ。」
アルマン「理由なんて無い。」
フランツ「あ、わかった。もう話しがネタ切れなんだろ!そうだろ、ジェームズ!」
グラウ 「・・・・」
アルマン「違う。」
フランツ「なんだよ。なら来たって別にいいだろ?」
アルマン「ダメだ。」
フランツ「(ジェームズに)なぁ、アルマン、何かあったの?」
グラウ 「ごめん。」
フランツ「ごめんって、」
グラウ 「もう、遊んであげられそうにないんだ・・。忙しくてさ・・・」
フランツ「そんな・・・」
アルマン「そういうことだ。わかっただろ。ここはお前みたいなのが来る所じゃないんだ。」
フランツ「だからなんでだよ。忙しいなんて嘘だろ?」
グラウ 「駄目なんだ・・・」
フランツ「理由は?」
アルマン「駄目なものは駄目だ。」
フランツ「だから駄目って言う理由を・・・」
アルマン「お前が子供だからだ!!」
フランツ「ッ!!・・・なんだよ、それ・・・僕が子供だからそんなこと言うのかよ。」
アルマン「ああそうだ。」
フランツ「そんな言い方・・・」
アルマン「俺には仕事があるんだ。もうこれ以上ガキの世話なんかしていられないんだよ。」
フランツ「・・・わかったよ。もう来ないよ。こんなとこ!!」

立ち去りかけるがふと足を止め、背を向けたままで。

フランツ「・・・本当は母さん、病気なんだ。」
グラウ 「え?」     
フランツ「ずっとベッドで寝てて、僕がいなきゃ駄目でさ。だから、どうせ
     あんまり来られなくなるんだ。今日は最後に、また憂いの木の話が
     聞きたくて来たんだ・・。
     でも・・二人がそんな奴だったなんて思わなかった。」
アルマン「早く、帰れ。」
フランツ「わかってるよ。」

フランツ立ち去る。

グラウ 「・・・これで、よかったんですよね・・・・」
アルマン「ああ。」
グラウ 「でも、ちょっと可哀想でしたね・・・・」
アルマン「戦争になって、門が真っ先に危なくなるんだ。仕方ないさ。」
グラウ 「そうですね・・・」

落ち込んだ様子のジェームズ。

アルマン「・・ほら、何落ち込んでるんだ?」
グラウ 「・・・・」
アルマン「俺たちは仕事だ仕事。国のために働くのが夢だったんだろ?」
グラウ 「はい。」
アルマン「国がこうなった以上、この体を国に捧げる覚悟で守らなきゃな。この門を。」

暗転
明るくなるとフランツの家。
テーブルと二つの椅子が置かれている。そこに母を支えゆっくりとフランツ登場。

フランツ「母さん、大丈夫?本当にベッドで食べなくていいの?」
母親  「大丈夫。一日中ベッドの上じゃあ、気が滅入ってしまうもの。
     治るものも治らなくなっちゃうわ。体調だって、前に比べたらずっと
     元気よ!」
フランツ「でも・・・」
母親  「それに、たまにはこうやって、あなたと一緒にここでたべたいの。
     それ位の楽しみがあったっていいじゃない。」
フランツ「なら良いけど、お願いだから無理しないでよ?
     お医者様だって、『まだ安静にしてなさい』って言ってたでしょう?」

そう言ってフランツは料理の乗ったトレイを取りに、来た方にハケる。

母親  「はいはい。あ~ぁ、フランツもお父さんに似て、心配性になっちゃった
     わね~・・昔は毎日遊んで、泥だらけになって帰ってくるような
     やんちゃ坊主だったのに。怪我して帰ってきても、『大丈夫大丈夫~!』って、
     次の日にはまた怪我つくってきて。
     今じゃ毎日どこのトマトが安いとか、玉ねぎは血液をサラサラにするとか、
     朝にココアを飲むといいとかそんなことばっかり・・・・」

フランツ、二人分の食事が乗ったトレイを持ち、出てくる。

フランツ「何?何か言った?」
母親  「いいえ。我が息子が非常に家庭的に、すくすくと成長してくれて、
     母さんはとっても嬉しいわ。」
フランツ「いかにも不満そうな言い方だけど?」
母親  「ふふふ、冗談よ。あなたが毎日家のことをしてくれて、本当に
     助かってるわ。ありがとう。」
フランツ「そ、そんな改まって言わないでよ・・。何か照れるだろ。」
母親  「そう?」
フランツ「そうだよ。そんなこと滅多に言わないくせに。」
母親  「じゃあもっと言っちゃおうかしら。ありがとうありがとう(と十数回連呼)」
フランツ「あーもうやめてよ!!」
母親  「まだ十四回しか言ってないわよ。」
フランツ「何回いうつもりなんだよ!!それに、家のことやるなんて、当たり前だろ?
     自分の家のことなんだしさ、もう小さい子じゃないんだ。母さんだって・・あっ」
母親  「・・そうね、お母さんがこんなんじゃあね。」
フランツ「ち、違うよ!!!」
母親  「やるしかなくなっちゃうわよね。」
フランツ「そんなこと言ってないだろ!」
母親  「でも、あなただってまだ他のお友達と遊びたい年頃でしょ?」
フランツ「そんなこと・・・」
母親  「昔は母さんが『夕日が沈む前に帰ってきなさい』って、いくら言っても
     帰ってこない位だったもの。」
フランツ「いいんだよ、僕のことは!!僕は家のことやるの好きなの。
     好きだからやってるの!!」
母親  「・・・・。」
フランツ「だから母さんは関係ないよ。」
母親  「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいわ。」
フランツ「余計なこと考えてないで、母さんは病気を治すことだけ考えてればいいんだよ!
     ほら、早く食べないと冷めるよ!」
母親  「はいはい。」

二人『いただきます』と一言。母、シチュー(スープ?)を一口。

母親  「ん、今日もおいしい。」
フランツ「どーも。」

二人は食べ始める。と、ふいに母が口を開く。

母親  「にんじん、食べられなかったら母さんのお皿に入れていいわよ。」
フランツ「いいよ。」
母親  「え、にんじん食べられるようになったの?」
フランツ「うん。もう子供じゃないんだから、食べられるよ。」
母親  「へぇ・・・」
フランツ「なんだよ・・・」
母親  「ううん。なんでもない。」

沈黙があるが、母は何か意を決したように話し始める。

母親  「フランツ、」
フランツ「ん?」
母親  「もうすぐ、戦争が始まるって・・お隣のおじさんが言ってたじゃない?」
フランツ「うん・・・」
母親  「そのことなんだけど、」
フランツ「何?」
母親  「もし・・もしもの時は、お母さんはいいから。」
フランツ「え?」
母親  「だから・・もしもの時はね、フランツ。あなたはお母さんを置いて・・」
フランツ「どうしたんだよ急に。」
母親  「こんなんじゃお母さん、フランツの足手まといになっちゃうから・・・」
フランツ「何言ってんだよ・・・」
母親  「もし、この町まで戦場になるようなことになったら、あなたは
     お母さんのことなんて気にしないで、一人で逃げなさい。」
フランツ「出来るわけ無いだろ!!!そんなこと・・・!!!!
     何弱気になってんだよ・・・。
     母さんが心配しなくても、この国の門はアルマンたちが守ってるんだから
     大丈夫だよ。絶対。
母親  「それでも、もしものことが・・ゴホッゴホッ・・・」

母親は急に咳き込む。

フランツ「母さん!?ちょっと大丈夫!?」
母親  「(咳き込みつつ)ええ、大丈夫よ・・・・」
フランツ「もう、縁起でもないこと言うからだよ・・・」
母親  「そう、ね・・ゴホッ・ゴホッ・・・」
フランツ「やっぱりベッドでたべよう?スープ、そっちに持っていくから・・・」

母は一度頷き、フランツは母を支えてハケる。ゆっくりと照明FO。

暗転

明転
再びフランツの家。同じ部屋。そこでフランツは荷物をまとめている。

フランツ「ランプにチーズ、パン・・・肩掛け。後は・・・・・」

勢いよくドアが開き、傷を負ったアルマンが入ってくる。

アルマン「フランツ・・・」
フランツ「っ!・・・なんだよ、今忙しいんだよ!
     謝りに来たなら、今更謝ったって許さないんだからな!!」
アルマン「忙しい・・?」
フランツ「そうだよ。門番なら知ってるだろ、もうすぐこの国も帝国の戦争に
     巻き込まれるって。」
アルマン「今はそんなことを言っている場合じゃない・・・」
フランツ「ッ!!??どうしたんだよ、その傷!!」
アルマン「気にするな・・・それより、お前の母さんは・・?」
フランツ「母さんなら奥の部屋で寝てるけど・・・」
アルマン「良かった。早く母さんを連れて逃げろ!!」
フランツ「急いで逃げるって、まだ戦争はまだ始まってないだろ?」
アルマン「もう門は壊された。」
フランツ「嘘だろ・・・」
アルマン「嘘じゃない。街はもう火の海だ・・・・」
フランツ「・・・・」
アルマン「街だけじゃない、ここだってもう直・・・」
フランツ「だって!!!だって・・ゴルトさんや、ジェームズだっているじゃないか!!
     それなのに・・なんで・・・・!!!!」」
アルマン「(首を左右に振り)二人は、もう・・・・」
フランツ「そんな・・・・」
アルマン「お前は母さんを連れて早くここから逃げろ!!!
     今来てる奴らは第一陣・・・・
     見張りの奴の話だと、すぐそこまで帝国軍本部が来てるんだ。
     もう直ここも危なくなる。だから、」
フランツ「じゃあアルマンも!!」
アルマン「俺はここに残らなきゃならない。」
フランツ「何で!?」
アルマン「俺は門番として、残って戦う。」
フランツ「残ったりしたらアルマンも死んじゃうじゃないか!!!」
アルマン「それが門番の仕事だ!!!!」
フランツ「なら・・・アルマンが残るだったら、僕もここに残る!!」
アルマン「何言ってんだ!!!お前が残ったら、誰が母さんを守ってやるんだ!!??
     男だろ!!!フランツ、お前なら俺がいなくたって大丈夫だ。」
フランツ「嫌だ!一緒にいこうよ!!」
アルマン「嫌じゃない!!!」
フランツ「嫌だ・・嫌だよ!!!」
アルマン「フランツ!!!!(強く)」
フランツ「(ビクッっとして)」
アルマン「勇気を出せ、フランツ・・・。大丈夫だ。
     俺たち、いや・・リヒトは決して負けはしない。決してだ!!
     それがなぜだかわかるか?」
フランツ「(顔を左右に振る)」
アルマン「俺たちの国、リヒトの意味は“光”。神の御加護の光だ。でも、それだけじゃない。」
フランツ「・・・・」
アルマン「平和を願う、民の祈りと命の光だ。」
フランツ「光・・・」
アルマン「俺は光を守らなければならない。」
フランツ「・・・・」
アルマン「お前もその光を忘れるな。」
フランツ「・・・うん。」
アルマン「よし。じゃあなるべく早くここから逃げるんだ。いいな?」
フランツ「うん。わかっ・・」

突如銃声が鳴り響き、アルマンが撃たれ倒れる。

フランツ「アルマン!!!」
 敵  「おーい!門番が一人残ってやがったぞ!!おーい!!」

最期の力を振り絞り、打ち返すアルマン。

アルマン「伏せろフランツ!!!!!」

倒れ絶命するスパイ。
フランツはアルマンの指示通り一旦伏せるが、アルマンが倒れるのをみて
すぐさま駆け寄り。

アルマン「逃げ・ろ・・!母さ、んを・・守って・やるんだろ・・・?」

照明、このアルマンの台詞に合わせ地明かりを除々にサスに変える。

フランツ「嫌だ・・・嫌だよ!!!」
アルマン「早、く・・・・」

息絶えるアルマン。

フランツ「アルマン!?アルマン!!??」

揺さぶってみるが、彼は目覚めない。

フランツ「起きてよ・・・ねぇ起きてよ・・・!!!
     また・・色んな話、聞かせてよ・・・・ねぇ!!!!」

揺さぶり続け。
 
フランツ「勇気・・出すから・・・・」

次第に揺さぶることを止め。

フランツ「・・・なんで、何でこんなことに・・・・」

するとドアから、小さく風の音。それとともにサスの明かり、強く。
フランツ「え・・・?」

風、大きく。サスから強めの地明かりにFI。

フランツ「何だ・・これ・・・・。風・・?違う!!花びらだ!!!!
     それも、白い・・・」

フランツ、気付く。

フランツ「白い、花・・・?憂いの木・・・・!!!!!
     憂いの木よ、僕の願いを聞いて!!
     こんなことになるなら・・・大切な人を簡単に失ってしまうなら、
     僕は、英雄になんかなれなくて良い!!!
     こんな戦争、なくなっちゃえばいいんだ!!!!!」

風が強くなる。地明かり、一気に強くなりFO。

暗転(風の音を流して下さい)
明るくなる。墓標の前のフランツ。

フランツ「戦争は、あの後突然の吹雪で帝国軍が一時撤退。
     帝国内で広まっていた、僕らの国の反乱の疑惑は、帝国の領地拡大で
     犠牲になった国々の反乱のための作戦だったらしい。
     だけど、帝国は未だにそれを認めようとしない。
     今は冷戦状態だけど戦争自体はまだ終わってなんかいないんだ。
     ねぇ、アルマン・・・
     もしかしたらあの時の風は花びらじゃなく、雪だったのかもしれない。
     でも、僕にはあの時見えた気がするんだ。君が話した、憂いの木が。
     だけど憂いの木は戦争を食い止めてはくれても、終わらせては
     くれなかった。
     あの時は君やジェームズが僕やこの国を守ってくれたけど、
     今はもういない。
     今度は僕らがやらなきゃいけないんだよ。
     今度は僕らが憂いの木になる番なんだ。
     
     君やジェームズが僕の中にいきているように、どこにでもあるんだよ、
     憂いの木は。
     きっと、心の中に・・・・。」

見上げると、はらりと数枚の白い欠片が宙を舞い。(SE 小さく風の音。)

フランツ「誰の、心の中にも・・・・」

母親  「(声のみ)フランツー!!ちょと来てちょうだい!!!」
フランツ「わかったよかあさん、今行くよ!!」

走ってハケるフランツ。
その欠片が雪なのか、花弁なのか。
それはだれもしらない。



――幕――
     
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  以上、いかがでしたでしょうか?
  よろしければ下記のページより、感想を御記入下さい。
  もちろん、叱咤激励なんでもかまいません。
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 それでは、今後とも『はりこのトラの穴』をよろしくお願いいたします。

2011-10-25 未分類 トラックバック:0コメント:0

   題名:カフェ ラング・ド・シャ
   劇団:Little em
   作者:永村閏
 ---------------------------------------------
 著作権について
 ・本ページで公開されている作品の著作権をはじめとするすべての権利は
  全て作者が保有いたします。
 ・このページからダウンロードできる脚本は全て無料で読んでいただいて
  結構です。ただし、舞台等で御利用の際は、作者からの上演許可を取っ
  ていただくようお願いいたします。
 ・必要に応じての改編等も、作者への許可の上行って下さい。
 ・著作権料が発生する場合、指定された額を作者へ送金を忘ないように
  お願いいたします。本作品おける著作権料は、下記に示す通りです。

 ---------------------------------------------
 この作品には独自の著作権使用料が設定されています。
 ---------------------------------------------
2011年1月1日より使用料を下記のように改定いたします。

①演劇形態での台本使用

[一般団体]
   無料公演 5,000円
   有料公演 8,000円

[学生団体]
   無料公演 2,000円
   有料公演 5,000円


②演劇形態をとらない台本使用(映像・ボイスドラマ・朗読・その他)

 一般・学生に関わらず、使用料応相談。
 ※作品をインターネット等で配信する際は、
  配信の都度ご連絡をいただきますようお願いいたします。

(本規定は予告なく変更される場合があります)
 ---------------------------------------------
『カフェ ラング・ド・シャ』


【登場人物】
男      カフェ経営者。
少女     カフェ内にいる黒服の少女。
恋人     男の恋人。
女      最後の客。





       薄明かりのカフェの店内。
       男が一人、店じまいをしている。
       ドアの開く音がする。
       女が入店する。

女   あの。
男   え?
女   もうお店終わっちゃいました?
男   あー…。
女   そうですよね。すみません。
男   あ、でもいいですよ。どうぞ。
女   いえ、ご迷惑ですから。また来ます。
男   いやそれが、今日で店をたたもうかと思ってまして。
女   え?お店閉めちゃうんですか?
男   ええ。だから貴女が最後のお客様になります。どうぞ。
女   じゃあ。

       女、席に着く。

男   何にします?
女   オススメとかありますか?
男   やっぱりホットコーヒーですかね。
女   じゃあそれを。
男   はい、かしこまりました。

       男、コーヒーをいれにいく。
       沈黙。

女   …なんでお店閉めちゃうんですか?
男   え?
女   いえあのすみません。
男   いいえ。こんな路地裏でしょ?やっぱり客足が伸びなくてね。でもコーヒーの味は逸品ですよ。

       男、コーヒーを女の前に置く。
       女、出されたコーヒーに手を出さず、じっと見ている。

男   毒なんて入ってませんよ?
女   いえ違うんです。実は猫舌で…。
男   あぁ。じゃあアイスにすればよかったのに。
女   でもオススメなんでしょう?
男   あはは。そうですね。
女   すみません、熱いうちに飲んだほうが美味しいっていうのはわかってるんですけど。
男   仕方ないですよ。冷めるまで何かお話でもしましょうか。
女   じゃあこのお店のお話が聞きたいです。
男   この店の?
女   お店が終わってしまう日に入ったのも何かの縁ですし。このお店が確かにここにあったことを覚えておきたいんです。
    それが最後の客としての義務じゃないかなって。
男   ありがとうございます。
女   このお店、なんていう名前なんですか?
男   え?
女   いえあの…看板に何も書いてなかったので。
男   あぁ。ないんですよ、名前。
女   何故?
男   実は。

       男、女の席を離れ別の席へ向かう。
       そこには黒服の少女が座っている。

男   ねえカモミール。
少女  ……。
男   ねえってば。
少女  ……。
男   カモミール?
少女  ……。
男   カモ。
少女  その呼び方はやめて。
男   だったら返事してよ。
少女  返事しない。
男   なんで?
少女  怒ってるから。
男   だからあれは何回も謝っただろう?
少女  許さない。
男   君が猫舌だっていうこと、忘れてたんだよ。
少女  忘れてたじゃ済まされないわ。
男   だからごめんって。
少女  心がこもってない。
男   ごめん。
少女  ……。
男   でも熱いうちに飲んだほうが美味しいのに。
少女  熱いと、火傷するのよ。
男   そんな大袈裟な。普通の人は飲める温度だよ。気合が足りないんじゃないの?
少女  またそうやって猫舌を馬鹿にして。いい?猫舌っていうのは口の中がデリケートってことなの。
    粘膜が弱いから熱いものをいれると火傷するの。猫舌のあたしに対して熱いものを出す…これは立派な傷害罪よ。
男   はいはい。悪かったってば。あ、そうだ。
少女  なに?
男   お店の名前思いついた。
少女  オープン来月だよ。まだ決めてなかったの?
男   なかなかいいのが浮かばなくて。でも最高なのが浮かんだ。
少女  どんな?
男   喫茶猫舌。
少女  ださ。
男   えーよくない?
少女  変よそんなの。絶対変。
男   そうか。
少女  もっと可愛くてオシャレなのがいい。
男   可愛くてオシャレ…ね。じゃあやっぱりフランス語がいいかな?…でもフランス語で猫舌ってなんて言うんだろう?
少女  猫舌にこだわらなくていいよ。
男   いいじゃん。えっと、猫…シャット…?
少女  ねえ。
男   ん?
少女  なんでフランス語?
男   君の名前もフランス語だから。カモミール。
少女  なんであたしの名前フランス語なの?
男   だって君フランス生まれじゃない。
少女  え?

       男、席を離れカウンターに向かう。
       少女にピン。

少女  あたしには幼少の頃の記憶がありません。気付いたら彼と一緒にいました。
    昔のことを覚えてないってなんだか変な感じだけど、過去なんてどうでもいいんです。彼といる今この瞬間が大切だから。
    でもあたしがフランス生まれだって言うのは、彼のとっておきのジョークかもしれないと、最近あたしは思っています。
    だってこんなに流暢な日本語を喋って、こんなに立派な黒髪を持っているあたしだもの。
    彼の言っていることが嘘でも本当でも、どっちでもいいんです。あたしが日本人でもフランス人でも、そんなことどうでもいいんです。

       男、少女の元へコーヒーを持ってくる。

男   はい、お待たせ。
少女  冷ました?
男   ちゃんと。
少女  ……。
男   ミルクは3つ?
少女  4つ。
男   多くない?
少女  そうじゃないと飲めない。
男   カモミールは子供だなぁ。
少女  何よ。
男   だって苦いと飲めないんでしょ?
少女  苦いとっていうか、なんていうか。
男   いいよ、たくさん入れな。

       沈黙。

男   いい天気だなぁ。
少女  うん。
男   こういう日は店番なんかしないで遊びに行きたくなるよね。
少女  ダメよ。
男   お弁当もってピクニックとかいいね。
少女  ダメだってば。
男   そろそろカモミールが咲く季節だし、ちょっと公園まで行ってみない?
少女  もう、どうして遊びにいくことばかり考えてるの?
男   だって暇なんだもん。どうして日曜の午後だって言うのにお客さんが一人もいないわけ?
少女  簡単じゃない。
男   理由わかるのカモミール?
少女  あなたのコーヒーが熱くて不味いから。
男   熱いのはともかく不味くはないよ、失礼な。
少女  不味いんです。ミルク4つ入れないと飲めないくらいに不味いんです。毎日毎日飲ませられるあたしの身にもなってよ。
男   僕は世界中のコーヒーを飲んできたんだから。美味しいコーヒーがどんなものかなんて誰よりもわかってるんだよ。
少女  美味しいコーヒーを見分けられる人が必ずしも美味しいコーヒーを入れられるとは限らないでしょ。
男   そんな馬鹿なことが…。

       男、コーヒーを飲む。

男   不味い…。
少女  ほら。
男   あれ?
少女  だいたい味見もしないでお客様に出そうだなんて。
男   おかしいなぁ。いい豆だから絶対美味しいはずなんだよ。
少女  じゃあなんで不味いの。
男   だからおかしいなぁって。
少女  コーヒーも不味いし、それ以前にお店の名前がないのがまずいんじゃない?
男   だって喫茶猫舌は嫌なんでしょ?
少女  嫌よ。
男   じゃあ保留。いい名前が見つかるまで。
少女  いつよそれ。
男   んー不味い。もう一回入れなおしてくる。
少女  ミルクは4つね。
男   ……。

       男、カウンターに向かう。
       少女にピン。

少女  ええ。他人から見たらさぞかし不思議に見えたでしょうね。
    いい年をした男と年端もいかない女の子が一緒に店を切り盛りしてるんですもの。
    親子にしては年が近いし。兄妹にしては離れているし。もちろん私たちは親子でも兄妹でもありません。
    恋人同士、という言葉が一番近いように思います。あたしの髪を撫でる彼の手も、慈しむような瞳も、全部あたしのもの。
    それでも単純に恋人なんて言葉では言い表せないくらいに、私たちの間には深い愛情が通っていたのです。

       一人の女が入り口から入ってくる。

恋人  お邪魔します。
少女  いらっしゃいませ。
恋人  へぇ。結構可愛いお店じゃない。
少女  あの。どちら様?
恋人  あ、貴女がカモミール?
少女  そうですけど。どちら様?
恋人  店長さんいるかな?
少女  いますけど。どちら様?

       男、入ってきた女に気付く。

男   あれ来てくれたの?
恋人  もう探しちゃったわ。この辺りのカフェ全部巡っちゃった。店の名前がわからないから交番で聞くことも出来ないし。
男   名前まだないんだよ。
恋人  何それ。我輩は猫である?
男   そうそう。名前はまだない。
少女  ねえ誰なの、この女。
男   あぁ紹介するよ。
恋人  その子がカモミールでしょ。
男   よくわかったね。
恋人  わかるわよ。話に聞いてたもの。本当に真っ黒なのね。
少女  なにこの失礼な女?
男   まあまあ。
恋人  こんにちはカモミール。彼の恋人です。よろしくね。
少女  え?
男   なにか飲む?おごるよ。
恋人  当たり前でしょ。恋人からお金とろうっていうの?
男   そっちこそたかるなよ。何がいい?
恋人  アイスコーヒー。
男   わかった。
少女  恋人がいたの?
男   ん?いたよ?言ってなかった?
少女  そんなの知らない。聞いてない。
男   何をそんなに興奮してるの。カモミールが大切なことに変わりはないよ。
少女  もちろん私と貴方は恋人以上に深く繋がってるわ。
男   だったらいいじゃない。
少女  でも。
恋人  私が考えてあげようか?
男   え?なに?
恋人  店の名前。ないんじゃ不便でしょ。私考えようか?
少女  何それ。勝手なことしないでよ。
男   なにかいいのあるかな?僕は喫茶猫舌がいいと思うんだけどカモミールが嫌だって言うんだ。
恋人  そりゃ嫌でしょうね。
男   ねえ、フランス語で猫舌ってなんていうの?
恋人  んーフランス語に猫舌っていう言葉はないんじゃない?フランス料理って熱々のものないし。
    日本人に比べたらフランス人なんて皆猫舌だと思うよ。
男   そっか。
恋人  あ、こういうのはどう?
男   ん?

       (以降アドリブ)
       二人の会話が小さくなっていく。
       室内が溶暗していく。
       少女にピン。

少女  彼とあの女の会話は耳には入りませんでした。今まで知らなかった感情が身体の中で膨れ上がっていくのを感じました。
    この全身の毛が逆立つような感覚を私は忘れることはないでしょう。もちろんそれで彼との絆がなくなるわけではありません。
    ありませんが…。それからも度々、この女はやってきました。やって来る度にあたしの感情は膨れあがりました。
    あたしがこの女を嫌っているように、この女もあたしのことをよく思ってないようでした。
    そうよ。だって彼とあたしは恋人以上に親密な関係なんだもの。彼の手も、彼の瞳も、彼の全部があたしのもの。
    それが唯一の支えでした。あの日までは。

       室内が明るくなる。
       別の日。同じ位置の二人。

恋人  ねえ大丈夫なの?
男   うん。平気。
恋人  本当に?
男   平気だよ。
恋人  この前来た時もお客さんいなかったし。ただでさえ裏路地にあるんだからもっと宣伝しないとお客さん来ないよ?
男   そうなんだけど、まだ名前がね。
恋人  それでもさ。美味しかったら自然とお客さんは来るものでしょ?
男   これでもコーヒーの味はよくなってきたほうなんだよ。
恋人  そうね。美味しくなったと思う。
男   そのうち来るよ。気長に待つ。
恋人  私は心配してるの。お客さんが来ないのにはなにか理由があると思うの。
男   コーヒー?
恋人  じゃなくて、カモミール。
少女  なによ。
恋人  店の中にこんなのいたら普通びっくりするでしょ。
少女  何よ、こんなのって。
男   そう?可愛いでしょ?
少女  ねぇ、あたしこの女嫌い。
男   まあまあ。そんなに怒るなよカモミール。
恋人  やっぱりどう見ても変よ。あなたたち、気持ち悪い。
少女  ふん。
男   そんなこと言うなよ。
恋人  だって。
男   カモミールは悪くないよ。
少女  当たり前よ。
恋人  そうやってかばいだてするのもおかしい。
男   でもカモミールは家族なんだ。
少女  恋人と言ってもいいけどね。
男   そうだね。かばいだてもするよ。大切だもん。
恋人  全然わからない。だって、猫じゃない。
少女  え?
男   うん。猫だよ。それでも家族。
少女  猫?
恋人  家族っていうのは血の繋がった者同士を言うんでしょ。
男   だったら夫婦は?君と僕は家族にはなれない?
恋人  それは。
男   一緒にいた時間が僕たちを家族にするんだよ。ごめんなカモミール。お前は気にすることないからな?
少女  猫ってなに?ねえ、ねぇってば。猫ってどういうこと?
男   ん?なんだよ。何言ってるかわかんないよ。お前が人間の言葉を喋れたらなぁ。

       少女にピン。

少女  そうだ。あたしは彼の飼い猫だった。

       少女に怒涛の感情の波が押し寄せてくる。
       止まらない。それでも声に出すことなく、静かに押し殺している。
       その様子を淡々と眺める恋人。
       ようやくおさまったころ、少女、席を立ち店の外へ向かおうとする。

恋人  出て行くの?
少女  ……。
恋人  猫が黙って姿を消すなんて、まさか死ぬつもり?
少女  …死ぬつもりはない。けど彼の傍にはいられない。
恋人  自分が本当は猫だったのがそんなにショック?いいじゃない、家族なんでしょ。
少女  …あたしの言葉わかるの?
恋人  わかるよ。本当はずっとわかってた。
少女  あんた何。
恋人  さあ、なんでしょう?
少女  ……。

       少女、店を出ようとする。

恋人  どこ行くの?
少女  どこでもいいでしょ。
恋人  うん。どこへでも行っておいで。それで、十三歳になったら戻ってきなさい。
少女  え?
恋人  いいこと教えてあげる。十三年生きた猫はね、人間になれるのよ。

       恋人の手にはしっぽ。

少女  あんた。
恋人  その頃にはあたしもいなくなってるだろうから、あんたにバトンタッチ。彼をよろしくね。
少女  ……。

       少女、店を出て行く。

男   あれ、カモミールは?
恋人  知らないよ。
男   カモミール?カモミール?おかしいな、どこ行っちゃったんだろう。
恋人  その内戻ってくるよ、きっと。
男   うん…。

       男、女の席へ戻っていく。

女   その方は今は?
男   妻は、5年前に亡くなりました。
女   え…。
男   元々身体が弱いほうで。それでも必死になって僕とこの店を支えてくれました。
    本当は妻が亡くなった時にこの店も終わりにしようかと思っていたんです。けれど死ぬ前に、彼女が言い残したことがありまして…。
女   なんて?
男   カモミールが。十三歳になるまでお店は開けておいて。
恋人  カモミールが十三歳になるまでお店は開けておいて。

       恋人、店の奥へ消える。

女   …どういう意味ですか?
男   わかりません。それでも妻の遺言なので、守ろうと思いました。でも、わからないんですよ。カモミールが十三歳になる日が。
    元々拾い猫なんです。フランスに旅行に行ったときに仲良くなって、そのまま連れてきちゃったんです。
    だから年齢もわからなくて。たぶん、去年あたりに十三歳になったと思うんです。もちろん生きていればの話ですが。
    それでも正確な日付はわからないし、この一年ずるずると先延ばしにしてたんですけど。
    過ぎてしまったかもしれない日を待つのはもう終わりにしました。だから今日で店じまいです。
女   ……。
男   すみません。こんな話をしてしまって。もう終わりにしましょう。
女   そうですね。もう待つ必要はありませんから。
男   え?
女   もう待たなくても大丈夫です。
男   ……。
女   コーヒー、そろそろ飲める温度になったと思いますので。
男   あ、そうですね。ごめんなさい、長話をしてしまって。どうぞ。
女   ミルク、いただけますか?
男   はい。いくつ入りますか?
女   4つ。
男   4つ?
女   4つ、いただけますか?
男   …1つで大丈夫だと思います。
女   じゃあ1つ。

       男、ミルクを1つ女の前に置く。
       女、ミルクを入れコーヒーを飲む。

女   うん、大丈夫。美味しい。
男   成長した?
女   うん。昔は飲めたもんじゃなかったけど。
男   ……。
女   ただいま。
男   おかえり、カモミール。それと十三歳の誕生日おめでとう。
女   知らなかったくせに。
男   だって君教えてくれなかったじゃない。
女   教えたくても、あたしの言葉通じないでしょ。
男   ……。
女   なんてったって、フランス生まれだもの。
男   わからないはずだ。

       女、また一口コーヒーを飲む。

男   この十年間どこに行ってたの?
女   フランス。
男   帰ってたんだ?
女   ううん。あたしの帰る場所はここだけ。
男   じゃあ何しに?

       女、また一口コーヒーを飲む。

女   …お店、閉めちゃダメだよ。
男   え?
女   あたしも帰ってきたし、コーヒーだって美味しい。それに貴方の奥さんに頼まれたもの。だからお店は閉めちゃダメ。
男   でもやっぱり店の名前が。
女   もう決めたよ。
男   え?
女   カフェ『ラング・ド・シャ』。
男   ラングドシャってお菓子の?
女   うん。フランス語で、猫の舌っていう意味。
男   猫の舌…。
女   いい名前でしょ。
男   あはは。もしかしてそれ調べにわざわざフランスへ?
女   そうよ。
男   あははは。あははは。
女   いつまで笑ってるの。新装開店の準備しなきゃ。

       女がボードをまわすとそこには文字が。
       『カフェ ラング・ド・シャ OPEN』
       閉幕。
 ---------------------------------------------
  以上、いかがでしたでしょうか?
  よろしければ下記のページより、感想を御記入下さい。
  もちろん、叱咤激励なんでもかまいません。
  作者の方の励みにもなりますので・・・
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 それでは、今後とも『はりこのトラの穴』をよろしくお願いいたします。

2011-10-25 未分類 トラックバック:0コメント:0

   題名:カフェ ラング・ド・シャ
   劇団:Little em
   作者:永村閏
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 著作権について
 ・本ページで公開されている作品の著作権をはじめとするすべての権利は
  全て作者が保有いたします。
 ・このページからダウンロードできる脚本は全て無料で読んでいただいて
  結構です。ただし、舞台等で御利用の際は、作者からの上演許可を取っ
  ていただくようお願いいたします。
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 ・著作権料が発生する場合、指定された額を作者へ送金を忘ないように
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 この作品には独自の著作権使用料が設定されています。
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2011年1月1日より使用料を下記のように改定いたします。

①演劇形態での台本使用

[一般団体]
   無料公演 5,000円
   有料公演 8,000円

[学生団体]
   無料公演 2,000円
   有料公演 5,000円


②演劇形態をとらない台本使用(映像・ボイスドラマ・朗読・その他)

 一般・学生に関わらず、使用料応相談。
 ※作品をインターネット等で配信する際は、
  配信の都度ご連絡をいただきますようお願いいたします。

(本規定は予告なく変更される場合があります)
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『カフェ ラング・ド・シャ』


【登場人物】
男      カフェ経営者。
少女     カフェ内にいる黒服の少女。
恋人     男の恋人。
女      最後の客。





       薄明かりのカフェの店内。
       男が一人、店じまいをしている。
       ドアの開く音がする。
       女が入店する。

女   あの。
男   え?
女   もうお店終わっちゃいました?
男   あー…。
女   そうですよね。すみません。
男   あ、でもいいですよ。どうぞ。
女   いえ、ご迷惑ですから。また来ます。
男   いやそれが、今日で店をたたもうかと思ってまして。
女   え?お店閉めちゃうんですか?
男   ええ。だから貴女が最後のお客様になります。どうぞ。
女   じゃあ。

       女、席に着く。

男   何にします?
女   オススメとかありますか?
男   やっぱりホットコーヒーですかね。
女   じゃあそれを。
男   はい、かしこまりました。

       男、コーヒーをいれにいく。
       沈黙。

女   …なんでお店閉めちゃうんですか?
男   え?
女   いえあのすみません。
男   いいえ。こんな路地裏でしょ?やっぱり客足が伸びなくてね。でもコーヒーの味は逸品ですよ。

       男、コーヒーを女の前に置く。
       女、出されたコーヒーに手を出さず、じっと見ている。

男   毒なんて入ってませんよ?
女   いえ違うんです。実は猫舌で…。
男   あぁ。じゃあアイスにすればよかったのに。
女   でもオススメなんでしょう?
男   あはは。そうですね。
女   すみません、熱いうちに飲んだほうが美味しいっていうのはわかってるんですけど。
男   仕方ないですよ。冷めるまで何かお話でもしましょうか。
女   じゃあこのお店のお話が聞きたいです。
男   この店の?
女   お店が終わってしまう日に入ったのも何かの縁ですし。このお店が確かにここにあったことを覚えておきたいんです。
    それが最後の客としての義務じゃないかなって。
男   ありがとうございます。
女   このお店、なんていう名前なんですか?
男   え?
女   いえあの…看板に何も書いてなかったので。
男   あぁ。ないんですよ、名前。
女   何故?
男   実は。

       男、女の席を離れ別の席へ向かう。
       そこには黒服の少女が座っている。

男   ねえカモミール。
少女  ……。
男   ねえってば。
少女  ……。
男   カモミール?
少女  ……。
男   カモ。
少女  その呼び方はやめて。
男   だったら返事してよ。
少女  返事しない。
男   なんで?
少女  怒ってるから。
男   だからあれは何回も謝っただろう?
少女  許さない。
男   君が猫舌だっていうこと、忘れてたんだよ。
少女  忘れてたじゃ済まされないわ。
男   だからごめんって。
少女  心がこもってない。
男   ごめん。
少女  ……。
男   でも熱いうちに飲んだほうが美味しいのに。
少女  熱いと、火傷するのよ。
男   そんな大袈裟な。普通の人は飲める温度だよ。気合が足りないんじゃないの?
少女  またそうやって猫舌を馬鹿にして。いい?猫舌っていうのは口の中がデリケートってことなの。
    粘膜が弱いから熱いものをいれると火傷するの。猫舌のあたしに対して熱いものを出す…これは立派な傷害罪よ。
男   はいはい。悪かったってば。あ、そうだ。
少女  なに?
男   お店の名前思いついた。
少女  オープン来月だよ。まだ決めてなかったの?
男   なかなかいいのが浮かばなくて。でも最高なのが浮かんだ。
少女  どんな?
男   喫茶猫舌。
少女  ださ。
男   えーよくない?
少女  変よそんなの。絶対変。
男   そうか。
少女  もっと可愛くてオシャレなのがいい。
男   可愛くてオシャレ…ね。じゃあやっぱりフランス語がいいかな?…でもフランス語で猫舌ってなんて言うんだろう?
少女  猫舌にこだわらなくていいよ。
男   いいじゃん。えっと、猫…シャット…?
少女  ねえ。
男   ん?
少女  なんでフランス語?
男   君の名前もフランス語だから。カモミール。
少女  なんであたしの名前フランス語なの?
男   だって君フランス生まれじゃない。
少女  え?

       男、席を離れカウンターに向かう。
       少女にピン。

少女  あたしには幼少の頃の記憶がありません。気付いたら彼と一緒にいました。
    昔のことを覚えてないってなんだか変な感じだけど、過去なんてどうでもいいんです。彼といる今この瞬間が大切だから。
    でもあたしがフランス生まれだって言うのは、彼のとっておきのジョークかもしれないと、最近あたしは思っています。
    だってこんなに流暢な日本語を喋って、こんなに立派な黒髪を持っているあたしだもの。
    彼の言っていることが嘘でも本当でも、どっちでもいいんです。あたしが日本人でもフランス人でも、そんなことどうでもいいんです。

       男、少女の元へコーヒーを持ってくる。

男   はい、お待たせ。
少女  冷ました?
男   ちゃんと。
少女  ……。
男   ミルクは3つ?
少女  4つ。
男   多くない?
少女  そうじゃないと飲めない。
男   カモミールは子供だなぁ。
少女  何よ。
男   だって苦いと飲めないんでしょ?
少女  苦いとっていうか、なんていうか。
男   いいよ、たくさん入れな。

       沈黙。

男   いい天気だなぁ。
少女  うん。
男   こういう日は店番なんかしないで遊びに行きたくなるよね。
少女  ダメよ。
男   お弁当もってピクニックとかいいね。
少女  ダメだってば。
男   そろそろカモミールが咲く季節だし、ちょっと公園まで行ってみない?
少女  もう、どうして遊びにいくことばかり考えてるの?
男   だって暇なんだもん。どうして日曜の午後だって言うのにお客さんが一人もいないわけ?
少女  簡単じゃない。
男   理由わかるのカモミール?
少女  あなたのコーヒーが熱くて不味いから。
男   熱いのはともかく不味くはないよ、失礼な。
少女  不味いんです。ミルク4つ入れないと飲めないくらいに不味いんです。毎日毎日飲ませられるあたしの身にもなってよ。
男   僕は世界中のコーヒーを飲んできたんだから。美味しいコーヒーがどんなものかなんて誰よりもわかってるんだよ。
少女  美味しいコーヒーを見分けられる人が必ずしも美味しいコーヒーを入れられるとは限らないでしょ。
男   そんな馬鹿なことが…。

       男、コーヒーを飲む。

男   不味い…。
少女  ほら。
男   あれ?
少女  だいたい味見もしないでお客様に出そうだなんて。
男   おかしいなぁ。いい豆だから絶対美味しいはずなんだよ。
少女  じゃあなんで不味いの。
男   だからおかしいなぁって。
少女  コーヒーも不味いし、それ以前にお店の名前がないのがまずいんじゃない?
男   だって喫茶猫舌は嫌なんでしょ?
少女  嫌よ。
男   じゃあ保留。いい名前が見つかるまで。
少女  いつよそれ。
男   んー不味い。もう一回入れなおしてくる。
少女  ミルクは4つね。
男   ……。

       男、カウンターに向かう。
       少女にピン。

少女  ええ。他人から見たらさぞかし不思議に見えたでしょうね。
    いい年をした男と年端もいかない女の子が一緒に店を切り盛りしてるんですもの。
    親子にしては年が近いし。兄妹にしては離れているし。もちろん私たちは親子でも兄妹でもありません。
    恋人同士、という言葉が一番近いように思います。あたしの髪を撫でる彼の手も、慈しむような瞳も、全部あたしのもの。
    それでも単純に恋人なんて言葉では言い表せないくらいに、私たちの間には深い愛情が通っていたのです。

       一人の女が入り口から入ってくる。

恋人  お邪魔します。
少女  いらっしゃいませ。
恋人  へぇ。結構可愛いお店じゃない。
少女  あの。どちら様?
恋人  あ、貴女がカモミール?
少女  そうですけど。どちら様?
恋人  店長さんいるかな?
少女  いますけど。どちら様?

       男、入ってきた女に気付く。

男   あれ来てくれたの?
恋人  もう探しちゃったわ。この辺りのカフェ全部巡っちゃった。店の名前がわからないから交番で聞くことも出来ないし。
男   名前まだないんだよ。
恋人  何それ。我輩は猫である?
男   そうそう。名前はまだない。
少女  ねえ誰なの、この女。
男   あぁ紹介するよ。
恋人  その子がカモミールでしょ。
男   よくわかったね。
恋人  わかるわよ。話に聞いてたもの。本当に真っ黒なのね。
少女  なにこの失礼な女?
男   まあまあ。
恋人  こんにちはカモミール。彼の恋人です。よろしくね。
少女  え?
男   なにか飲む?おごるよ。
恋人  当たり前でしょ。恋人からお金とろうっていうの?
男   そっちこそたかるなよ。何がいい?
恋人  アイスコーヒー。
男   わかった。
少女  恋人がいたの?
男   ん?いたよ?言ってなかった?
少女  そんなの知らない。聞いてない。
男   何をそんなに興奮してるの。カモミールが大切なことに変わりはないよ。
少女  もちろん私と貴方は恋人以上に深く繋がってるわ。
男   だったらいいじゃない。
少女  でも。
恋人  私が考えてあげようか?
男   え?なに?
恋人  店の名前。ないんじゃ不便でしょ。私考えようか?
少女  何それ。勝手なことしないでよ。
男   なにかいいのあるかな?僕は喫茶猫舌がいいと思うんだけどカモミールが嫌だって言うんだ。
恋人  そりゃ嫌でしょうね。
男   ねえ、フランス語で猫舌ってなんていうの?
恋人  んーフランス語に猫舌っていう言葉はないんじゃない?フランス料理って熱々のものないし。
    日本人に比べたらフランス人なんて皆猫舌だと思うよ。
男   そっか。
恋人  あ、こういうのはどう?
男   ん?

       (以降アドリブ)
       二人の会話が小さくなっていく。
       室内が溶暗していく。
       少女にピン。

少女  彼とあの女の会話は耳には入りませんでした。今まで知らなかった感情が身体の中で膨れ上がっていくのを感じました。
    この全身の毛が逆立つような感覚を私は忘れることはないでしょう。もちろんそれで彼との絆がなくなるわけではありません。
    ありませんが…。それからも度々、この女はやってきました。やって来る度にあたしの感情は膨れあがりました。
    あたしがこの女を嫌っているように、この女もあたしのことをよく思ってないようでした。
    そうよ。だって彼とあたしは恋人以上に親密な関係なんだもの。彼の手も、彼の瞳も、彼の全部があたしのもの。
    それが唯一の支えでした。あの日までは。

       室内が明るくなる。
       別の日。同じ位置の二人。

恋人  ねえ大丈夫なの?
男   うん。平気。
恋人  本当に?
男   平気だよ。
恋人  この前来た時もお客さんいなかったし。ただでさえ裏路地にあるんだからもっと宣伝しないとお客さん来ないよ?
男   そうなんだけど、まだ名前がね。
恋人  それでもさ。美味しかったら自然とお客さんは来るものでしょ?
男   これでもコーヒーの味はよくなってきたほうなんだよ。
恋人  そうね。美味しくなったと思う。
男   そのうち来るよ。気長に待つ。
恋人  私は心配してるの。お客さんが来ないのにはなにか理由があると思うの。
男   コーヒー?
恋人  じゃなくて、カモミール。
少女  なによ。
恋人  店の中にこんなのいたら普通びっくりするでしょ。
少女  何よ、こんなのって。
男   そう?可愛いでしょ?
少女  ねぇ、あたしこの女嫌い。
男   まあまあ。そんなに怒るなよカモミール。
恋人  やっぱりどう見ても変よ。あなたたち、気持ち悪い。
少女  ふん。
男   そんなこと言うなよ。
恋人  だって。
男   カモミールは悪くないよ。
少女  当たり前よ。
恋人  そうやってかばいだてするのもおかしい。
男   でもカモミールは家族なんだ。
少女  恋人と言ってもいいけどね。
男   そうだね。かばいだてもするよ。大切だもん。
恋人  全然わからない。だって、猫じゃない。
少女  え?
男   うん。猫だよ。それでも家族。
少女  猫?
恋人  家族っていうのは血の繋がった者同士を言うんでしょ。
男   だったら夫婦は?君と僕は家族にはなれない?
恋人  それは。
男   一緒にいた時間が僕たちを家族にするんだよ。ごめんなカモミール。お前は気にすることないからな?
少女  猫ってなに?ねえ、ねぇってば。猫ってどういうこと?
男   ん?なんだよ。何言ってるかわかんないよ。お前が人間の言葉を喋れたらなぁ。

       少女にピン。

少女  そうだ。あたしは彼の飼い猫だった。

       少女に怒涛の感情の波が押し寄せてくる。
       止まらない。それでも声に出すことなく、静かに押し殺している。
       その様子を淡々と眺める恋人。
       ようやくおさまったころ、少女、席を立ち店の外へ向かおうとする。

恋人  出て行くの?
少女  ……。
恋人  猫が黙って姿を消すなんて、まさか死ぬつもり?
少女  …死ぬつもりはない。けど彼の傍にはいられない。
恋人  自分が本当は猫だったのがそんなにショック?いいじゃない、家族なんでしょ。
少女  …あたしの言葉わかるの?
恋人  わかるよ。本当はずっとわかってた。
少女  あんた何。
恋人  さあ、なんでしょう?
少女  ……。

       少女、店を出ようとする。

恋人  どこ行くの?
少女  どこでもいいでしょ。
恋人  うん。どこへでも行っておいで。それで、十三歳になったら戻ってきなさい。
少女  え?
恋人  いいこと教えてあげる。十三年生きた猫はね、人間になれるのよ。

       恋人の手にはしっぽ。

少女  あんた。
恋人  その頃にはあたしもいなくなってるだろうから、あんたにバトンタッチ。彼をよろしくね。
少女  ……。

       少女、店を出て行く。

男   あれ、カモミールは?
恋人  知らないよ。
男   カモミール?カモミール?おかしいな、どこ行っちゃったんだろう。
恋人  その内戻ってくるよ、きっと。
男   うん…。

       男、女の席へ戻っていく。

女   その方は今は?
男   妻は、5年前に亡くなりました。
女   え…。
男   元々身体が弱いほうで。それでも必死になって僕とこの店を支えてくれました。
    本当は妻が亡くなった時にこの店も終わりにしようかと思っていたんです。けれど死ぬ前に、彼女が言い残したことがありまして…。
女   なんて?
男   カモミールが。十三歳になるまでお店は開けておいて。
恋人  カモミールが十三歳になるまでお店は開けておいて。

       恋人、店の奥へ消える。

女   …どういう意味ですか?
男   わかりません。それでも妻の遺言なので、守ろうと思いました。でも、わからないんですよ。カモミールが十三歳になる日が。
    元々拾い猫なんです。フランスに旅行に行ったときに仲良くなって、そのまま連れてきちゃったんです。
    だから年齢もわからなくて。たぶん、去年あたりに十三歳になったと思うんです。もちろん生きていればの話ですが。
    それでも正確な日付はわからないし、この一年ずるずると先延ばしにしてたんですけど。
    過ぎてしまったかもしれない日を待つのはもう終わりにしました。だから今日で店じまいです。
女   ……。
男   すみません。こんな話をしてしまって。もう終わりにしましょう。
女   そうですね。もう待つ必要はありませんから。
男   え?
女   もう待たなくても大丈夫です。
男   ……。
女   コーヒー、そろそろ飲める温度になったと思いますので。
男   あ、そうですね。ごめんなさい、長話をしてしまって。どうぞ。
女   ミルク、いただけますか?
男   はい。いくつ入りますか?
女   4つ。
男   4つ?
女   4つ、いただけますか?
男   …1つで大丈夫だと思います。
女   じゃあ1つ。

       男、ミルクを1つ女の前に置く。
       女、ミルクを入れコーヒーを飲む。

女   うん、大丈夫。美味しい。
男   成長した?
女   うん。昔は飲めたもんじゃなかったけど。
男   ……。
女   ただいま。
男   おかえり、カモミール。それと十三歳の誕生日おめでとう。
女   知らなかったくせに。
男   だって君教えてくれなかったじゃない。
女   教えたくても、あたしの言葉通じないでしょ。
男   ……。
女   なんてったって、フランス生まれだもの。
男   わからないはずだ。

       女、また一口コーヒーを飲む。

男   この十年間どこに行ってたの?
女   フランス。
男   帰ってたんだ?
女   ううん。あたしの帰る場所はここだけ。
男   じゃあ何しに?

       女、また一口コーヒーを飲む。

女   …お店、閉めちゃダメだよ。
男   え?
女   あたしも帰ってきたし、コーヒーだって美味しい。それに貴方の奥さんに頼まれたもの。だからお店は閉めちゃダメ。
男   でもやっぱり店の名前が。
女   もう決めたよ。
男   え?
女   カフェ『ラング・ド・シャ』。
男   ラングドシャってお菓子の?
女   うん。フランス語で、猫の舌っていう意味。
男   猫の舌…。
女   いい名前でしょ。
男   あはは。もしかしてそれ調べにわざわざフランスへ?
女   そうよ。
男   あははは。あははは。
女   いつまで笑ってるの。新装開店の準備しなきゃ。

       女がボードをまわすとそこには文字が。
       『カフェ ラング・ド・シャ OPEN』
       閉幕。
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 それでは、今後とも『はりこのトラの穴』をよろしくお願いいたします。
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